1.「骨特異的なKlotho過剰発現が骨ミネラル代謝に及ぼす影響に関する検討」
骨細胞より産生されるFGF23はリン代謝,ビタミンD代謝において重要な役割を担っているが,その分泌調節機構は未だ完全には解明されていない。近年,遺伝子転座によりKlotho発現が著明に増加した症例において,FGF23過剰産生とともに低リン血症性くる病が引き起こされたことが報告されている。またアデノ随伴ウイルスによりKlothoの細胞外ドメインの発現を誘導したマウスにおいても,FGF23過剰産生と低リン血症性くる病が生じたことが報告されている。一連の結果より,分泌型KlothoがFGF23産生を促進するという仮説が提唱されている。しかし,これらの現象は分泌型Klothoではなく,骨に過剰発現した膜型Klothoによって引き起こされた可能性も考えられる。本研究では,骨特異的にKlothoを過剰発現するマウスを作成し,FGF23分泌調節における骨Klothoの役割を解明することを目的とする。
2.「急性腎傷害に伴う骨ミネラル代謝異常の病態解明」
慢性腎臓病は,二次性副甲状腺機能亢進症に代表される骨ミネラル代謝異常をきたすことが知られているが,急性腎傷害が骨ミネラル代謝に及ぼす影響はほとんど検討されていない。しかし近年,急激な腎機能低下がPTHやFGF23の急激な上昇を引き起こすことなどが報告され,この病態への関心が高まりつつある。急性腎傷害は必ずしも可逆性ではなく,患者の予後に長期的な影響を及ぼすことが複数報告されており,このような観点からも急性腎傷害が骨ミネラル代謝に及ぼす影響を明らかにすることはきわめて重要である。本研究では急性腎傷害モデルにおける骨ミネラル代謝異常の病態,またこの病態におけるFGF23の役割を解明することを目的とする。