個人の全ゲノム配列を解析する技術が確立されたが、次はゲノム情報を個人の健康管理と医療に応用するための技術開発が期待されている。そこで我々は、ゲノムワイド関連解析により疾患の遺伝要因を明らかにする研究を進めるとともに、生命情報学を駆使した疾患研究を展開する。特に、疾患分子情報のデータベース構築とこれを用いた個人の疾患リスク予測を実現し、疾患の原因解明と予防医療への応用をめざす。
我々は、新しい遺伝子改変技術を世界に先駆けて開発・改良すると同時に、その技術を高度な医学・生物学的解析に応用していきたいと考えている。2017年度は、最新のCRISPRゲノム編集技術を利用した独自の手法(Easi-CRISPR法やi-GONAD法)について複数の論文として公開するとともに、技術の普及を目指した講習会やワークショップなどを精力的に且つ国際的に進めた。
ヒトMHC領域は他のゲノム領域と異なり、多くの自己免疫疾患と極めて強い関連を示しているが、原因変異を突き止めることは容易ではない。これに対し、我々は古典的な遺伝マーカーであるマイクロサテライトおよび網羅的ハプロタイプシークエンシングを組み合わせることにより、疾患原因変異を突き止めることに成功している。そしてこれらの成果をもとにモデル動物の作製ならびに各疾患の発症機序の解明を目指している。
ヒトを含む哺乳類ではトランスポゾンに由来する配列が全ゲノムのおよそ半分を占めている。トランスポゾンはゲノムに寄生するジャンクDNAだと考えられてきたが、発癌、神経性疾患、ウイルス感染防御などに関与する可能性があることが分かってきた。私はトランスポゾン領域を機能注釈したデータベースを作成し、疾患関連の大規模塩基配列データと組み合わせて解析し、トランスポゾンが関与する様々な疾患を解明することを目指す。